電化製品や美容業界でも注目されているプラズマは、医療の世界でも大きな期待を持たれています。ガン細胞の死滅や皮膚疾患治療で効果を確認され、新たな効果の発見にも研究が進められているプラズマ医療。ここでは、そのメカニズムと効果について紹介します。
プラズマという物質状態
物質の状態といえば、固体・液体・気体がよく知られています。そこに第4の物質として登場したのが、プラズマです。物質には、それぞれに異なる性質があります。固体は、分子同士がガッチリと結びついて形が変わらない状態です。液体は、分子同士が結びついているものの形は変わる状態を指します。気体は、分子同士の結びつきが緩く形も密度も変わる状態。そしてプラズマは、気体の分子から電子が突出し、自由に動き回っている状態です。プラズマは温度が上昇するに伴って、より動き回りやすくなります。
プラズマが発生する状況
プラズマを発生させる条件は、温度を高くすることです。圧力や温度によっても発生のしやすさが違ってきますが、例えば密閉された空間でプラズマを発生させたい場合は大気圧を1気圧ほどにした空間に2つの電極間を置き、電圧をかければよいのです。高温になるほど原子が活性化し、電子が飛び出すようになります。つまり、電離するわけです。
空間から気体を抜いて真空に近づけた場合も、空間内の2つの電極間に電圧をかければスムーズにプラズマが発生します。密度を高めるのとは逆に、電子の密度を低くするのもプラズマの発生条件の一つです。真空の宇宙空間では、物質の99%がプラズマ状態にあることもお気付きでしょうか。
プラズマ治療では、レーザーを照射して局部の温度を上げることでプラズマを発生させています。電子レンジのように、物質にマイクロ波をあてることで原資を活性化させるのもプラズマを発生させる方法です。
生物の成長を促進させる作用
地球は荷電粒子に覆われていることから、人間や動物、生物にプラズマの影響が常に与えられています。プラズマ現象によって、生命の誕生や細胞の育成が促進され、新しい細胞が生まれているのです。生物の成長促進作用からヒントを得て活用されているのが、プラズマ医療です。
プラズマ医療では、空気中のプラズマを作る技術を応用して人体に直接プラズマを照射できるようになりました。実際の治療例では、重症の火傷がプラズマを照射して素早い治癒につながったり、プラズマを含む水の中で育てた金魚が大きく早く成長したりといった例も出ています。
ガン細胞のみを死滅させる
日本国内では、プラズマを研究する大学教授と医学部教授が協力して、プラズマ照射でガン細胞が死滅したことを発表しています。卵巣ガンに直接プラズマをあてる研究がすすめられた成果で、プラズマを照射した培養液をガンに投与したのです。
プラズマを直接照射するのが困難な部位や抗ガン剤に抵抗性のあるガンにも作用することがわかり、画期的な成果となっています。ガン細胞へのプラズマ効果は、正常な細胞には影響なくガン細胞のみを死滅させる結果に至ったのも大成果です。
活性酸素を発生させずに細胞を元気にする
人間が生きていくために欠かせない物質に、ATPがあります。筋肉を動かす、細胞を分裂させる、体温を維持する、体を構成する物質の合成をするなど、さまざまな働きに必要なエネルギー源がATPです。そのため、細胞は三大栄養素である糖質・脂質・タンパク質を処理することでATPを作り出しています。ATPを作るには、ビタミンCも欠かせません。
ATPとはアデノシン三リン酸のことで、エネルギーを貯蔵できる物質を意味しています。充電池のようなもので、エネルギーでいっぱいの状態をATP、エネルギー不足の状態をADPといいます。ATPを作る役目はミトコンドリアが負っていますから、ミトコンドリアが弱っていてもATPが不足しかねません。
ATPが充足している体は、若々しく健康です。病気にもかかりにくく、日々を元気に過ごせるでしょう。ところがATPが不足してくると熱エネルギーが生産されなくなるため、体温が低くなる、病気にかかりやすくなるといった心配が出てきます。とはいえ、活性酸素を発生させずにATPを充足させるのも難しいことです。
そこで注目されているのが、プラズマエネルギーを体内に取り込む方法です。マイナス電子が減少すると、血液の粘度が高まってしまいます。血液がドロドロの状態になれば、栄養が必要な細胞に届きにくく、老廃物や毒素が体内から排出されにくくなるのが問題です。マイナス電子がプラズマ振動している状態のプラズマエネルギーを常に取り入れるようにしておけば、血液ドロドロの状態は防ぐことができます。
プラズマを取り入れた体は、ミトコンドリアのATP生産回路にエネルギーを供給します。するとATP回路の速度が倍速し、ATPの量が増加。活性酸素の発生を心配することなく、ATPを充足させることができるわけです。
皮膚の再生
プラズマ医療機器には、開発メーカーごとの工夫が凝らされています。例えば、窒素ガスに超高周波をあてて活性化することでプラズマを発生させている医療機器もあります。プラズマのエネルギーは皮膚内の水分を通して深部へと伝わり、皮膚の再生を促進。エネルギーの設定も可能ですから、プラズマを届ける深さを変えることもできるのです。
プラズマ医療では、レーザーなど他の医療機器と比べると皮膚表面の組織にダメージを与える心配がありません。照射しても表皮はそのまま残り、自然に被覆材となって外部から守ることができます。ダメージが改善するのに必要な成長因子が漏れ出ることもなく、皮膚の深部でそのまま残って皮膚が再生するのを助けます。
プラズマは、色素や水分に吸収されない特徴もあります。効率よくエネルギーを届けるために役立つ特徴で、最小限のエネルギーでの治療につながります。つまり、ダウンタイムのリスクが少なく、高い治療効果が期待できるということです。持続性がある点も、プラズマのメリット。幅広いトラブルの治療に役立つことから、どの治療法が最適かと迷う必要もなくなるでしょう。以下に、プラズマの治療に適した代表的な皮膚ダメージをあげてみます。
紫外線や加齢によるダメージを受けた皮膚の改善
シミやくすみだけでなく、しわやたるみも同時に治療可能です。
ニキビとニキビ痕
一般的なニキビに加え、群発的な集族性ニキビ、症状が悪化した膿疱性ニキビにも効果を発揮します。長期的に改善しないニキビ痕も、2~3回の治療で効果が現れます。
毛穴の開き
毛穴の開きにも作用。引き締め効果を発揮し、ハリのある肌を取り戻します。
皮膚の質感の改善
柔軟でハリのある、健康的な素肌を取り戻せます。角質が乱れて水分量やコラーゲンなどが低下した肌も、プラズマによって再生可能です。
プラズマ治療後の経過は、エネルギーの設定によって違ってきます。超低出力で照射した場合はわずかな赤みが出る可能性がありますが、保湿を十分にすることで日常生活に制限はありません。
プラズマを低出力で照射した場合は、保湿をしながら3~4日もすると始めの変化を実感しやすいです。中程度の出力で当てた場合は、4日目頃に表面の古い皮膚が剥がれ落ちて新しい皮膚へと変わります。出力を高くした場合は、6~10日間程度の時間をかけて皮膚が生まれ変わります。